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思わぬ異能をかぶったとはいえ、
ご本人はそれはお元気なままだったし。
多少ほどその身の寸が詰まっただけのことで、
駆け回るのに支障が出ることもなく、
何の不自由もないぜと頑張ってはみたものの……
「う〜〜。」
「ちゅ、中也さん。」
例えばマンションのエントランスにて、
部屋の番号を入力するテンキーを設置したボードが
微妙にちょこっと…あと50センチは要るかなぁという高さだったので、
えいえいと爪先立っての手を伸ばしても届かなくって。
こちらさんも、日頃のいでたちに似せたそれ、
黒のスーツに丸高帽子、首には黒革のチョーカー、
スタンドカラーのシャツへクロスタイという格好の赤髪の坊やが、
“自分で様”が来ている幼児反抗期のお子様よろしく、
ぴょんぴょんしたりして何とか頑張ってみたものの。
物理的に無理なのだと察すると、
「……あ、」
昼時分という人目のない時間帯だったの見まわしてから、
ふわり、その身を浮かせて見せて。
ぎゅうひ餅みたいなやわやわな指を伸ばすと、
鍵を差してから ちょんちょんちょんと部屋番号をインプット。
「よっし、あがるぞ敦。」
「は〜い。」
重力操作という異能、わざわざ繰り出すなんて、
子供扱いがさすがに ヤなのかなぁと、苦笑交じりに後に続けば、
エレベータの扉前ではくるんと振り返って、
敦が着ていたジャケットの裾を小さなお手々が鷲掴む。
え?と見下ろせば、身長差がありすぎたせいか、
細い顎をそっくり返りそうなほど仰のけ、薄く口許が開きかけている幼子の、
ふんわりと柔らかで甘い、それはそれは愛らしい造作のお顔が
こちらを真っ直ぐ見上げて来ており。
「めんどうだから 抱えろ。」
「あ、はい。」
成程どこで他の住人が乗り込んでこないとも限らないし、
そんな眼がある中ではボタン操作にまたぞろ浮かぶわけにもいかぬ。
パパパッとそういった判断が出来る切り替えの妙は、
さすが実働部隊にて長く行動して来た身だからでもあろうが。
そんなしぶい蓄積に裏打ちされた判断からとはいえ、
抱っこしろと紅葉みたいな双手を伸べてくる姿は、
“うわぁ〜〜〜〜っ。//////////”
頬をほんのり赤く染め、正青の双眸うるうると潤ませた小さな坊やが
羽二重餅みたいなふわふかなお手々を取っておくれとねだっておいでと来て。
“勘弁してください〜〜〜っ。//////////”
虎の子くんとて小さい子供の扱いが判らないわけじゃあない。
かつていたあの孤児院で、
同年代の子らからは体のいい点数稼ぎの餌食にされていたけれど、
もっと年少の子らへは世話をするよう強いられてもいたので、
十代半ばになった頃には抱えてやったりあやしたりも日常であった。
なので、あまりの愛らしさへついつい内心で悲鳴を上げはしたけれど、
勿論のこと、出来ませんと放棄するなんてとんでもないない。
腰をかがめて両手を伸べ、
甘い柔らかさで出来た小さな肢体を懐へと迎え入れ、
立ち上がりつつ、片方の腕を尻の下へ渡してやって座らせれば、
間近になった幼い中也の顔が何か言いたげに見上げて来て。
「どうしました?」
途中で買い物してきた洋品店やらスーパーやらの紙袋、
肘へとずらして最上階へのボタンを押し、
じっと見上げる愛らしいお顔を敦が見つめ返せば、
「……なんでもねぇ。」
その割にむうと口許尖らせて、
ぱふんとこちらの胸元へ頬を伏せてしまうから。
何か言いたいけど言えないというのがほのかに届いたけれど、
「???」
あいにくと敦には、普段の中也ほどには洞察力が足りてはなくて。
好いてるお相手だけに、何か言いたげだというのはさすがに判るのだが、
まだまだ未熟だという自覚から、
どうしましたかと追いかけるように訊くことが出来ない。
儘ならない身になったので焦れてるだけかもしれないし、
そんな微妙な胸中へずかずか踏み入っていいものか。
見下ろした懐には、一廻り小さな黒い帽子が見えるばかりで、
それがちょっとした拒絶のように取れなくもなくて。
そういったゆっくりとした話をするのは、家に着いてからでもいいかなぁと
ぼんやり思ううちにも、エレベータは目的の階へと到達しており。
慣れた足取りで中也の住まいへ足を運び、
「…中也さん?」
着きましたよと声を掛ければ、
「???」
今度は彼の方が怪訝そうな顔になる。
丸みを増した青の双眸は、いかにも不思議そうにこちらを見上げていて、
「合かぎ、渡したよな?」
「え?」
ああはいと、思い出したよにポケットをまさぐって、
自宅の鍵と事務所の自分のデスクの鍵が下がっているキーホルダーを摘まみだす。
そこには先日渡された此のフラットの合鍵も下がっていて、
だがだが、まだ一度も使ったことはない。だって、
“中也さんが居る時しか。”
上がることはない場所だしと、そうとぼんやり思っていたので。
何か取りに行ってほしいとか緊急に頼まれでもしない限り、
自分が使うことはないだろなと構えていたものだから、
今もまた、中也が手慣れた様子で開けるものだと、当然ごととして思っていたようで。
動作としては別段面倒なそれじゃあないが、
この鍵でこの扉を、しかも自分が開けるのは初めてとなった敦であり。
「…いっとくけどな敦、
オレはてめえを かぎのかんりにんにしたかったわけじゃ ねぇんだからな。」
「……えっとぉ。//////////////」
決して ドアノブから遠かったからとか、
一旦降ろしてもらうのが面倒だったとか、そんな流れで開けさせたんじゃあないぞと。
むしろ、こんな機会ででもなけりゃあ、何だかんだと慌ててしまう敦だろうからと、
まずは使わせてから、これからもこうしろと言いたげな言い回しを持ってきた彼なのだろう。
子供扱いしちゃあいねぇんだということだろう、ちょっぴり小粋な言い回しをし、
それが把握できたことで、大人扱いしているのだという彼からの認識のようなもの、
それはしみじみとした形で実感も強めに感じ取れた…はよかったが。
すんなり理解できたそのまんま、
「…中也さんっ。///////////」
「なんだ。」
「何でそうも…。ううう〜〜。//////」
抱えたままの腕の中、見下ろした先には、
長い睫毛に縁どられた青玻璃の双眸も、
淡雪のようなふっかふかな頬もあどけない、
天使もかくやという麗しいお子様がいるわけで。
なに、このギャップ萌えっ///////////
ってゆうか、キリリと冴えた眼差しで言ってくれたところまではいい。
ああ、小さくなっても中也さんだと、頼もしい兄人だとホッとした…のに。
見下ろして視線が合った途端に にゃは〜〜っとやわらかく笑うのがいかん。
お父さんはそんな無自覚な小悪魔に育てた覚えはありません
…というのは、どっちかといや中也さんが常々言いたいらしい台詞なのだが。(笑)
敦くんにも日頃の自分の言動への自覚はないし、
勿論のこと、敦くんへの意趣返しなんかじゃあなくって、
“ただ単に、片意地張らない、
気を抜いた笑い方をしただけなんだろうけれど…。////////”
大人の時に見せられたなら、何か悪戯でも企んでそうな不敵な笑みとして、
ああざっかけない笑い方が頼もしいなとなったところが。
マシュマロと生クリームで出来ておりますと言わんばかりな、
小さくて愛くるしくって、柔らかそうで甘い香りがしそうな存在がやらかしたものだから、
“ああしまった、ボク可愛いものも嫌いじゃないし…。”
まぁったく、可愛いな手前はよと、
日頃の中也さんとか太宰さんみたいな余裕の受け止めようが出来るかどうか、
さっそく爆弾を落とされた今になって心配になったらしい、困った青少年だったらしいです。
◇◇
中也の自宅へ到着し、約束通りに敦が腕を振るったオムレツと
そちらは冷凍して作り置きだったコンソメオニオンスープを昼食に食べて。
結構すっとんぱったんと暴れた一幕だったの思い返したり、
お互いの居場所へ別れた向こうはどうして居るのかな、
太宰さんて芥川をそりゃあ甘やかしたく思ってたから、
何かと嵩じて困らせて無きゃいいけれどと
勝手に憶測して笑ってみたり。(こらこら)
夕刻が近づけば、今度は中也が
こないだ言ってたピカタと、サンマの飴煮、
丁度材料も揃ってるから異能で作ってやるよと、
それは器用にフライパンや鍋を浮かし、フライ返しも器用に操って、
キノコたっぷりのパイ包みスープとサラダ付き、
豚ロースのピカタと、梅干しとしょうがを利かせた甘辛のサンマ煮を、
ものの30分で食いしん坊へと供した見事さよ。
それからそれから、
ちょっとおしゃれなインテリアだと思っていたら、
盤上の窪みに並んだ金属のボール、
順番に移動させていくちょっぴり難解なゲームだったの、何戦かやってみて。
簡単なルールなのに何度やっても中也さんには歯が立たないまま、
小さな指には重たそうなボールに翻弄されて宵を過ごすうち、
時計の針はそろそろ頂上への距離を詰めつつあって。
「…そろそろ寝るか?」
「その前に。」
お風呂も一緒しますよと、
負け続けた腹いせでは決してなくのこと、
有無をも言わさず脱衣所まで、小さな身をひょいっと抱っこしたままで移動する。
これもまた独りで出来ると言い出しかねぬと案じたからで。
だがだがシャワーヘッドを掛けているところ、
今の身長では高すぎて届かぬかも知れぬ。
それに浴槽だって、足がつかないほども深くはないが、
濡れてるところですべって頭を打ったら?
それは免れられても溺れでもしたら大変だと心配してのこと。
手際よく服を脱ぎ、お互いにタオルだけを腰に巻いて、
湯をためておいた浴室へそれはすんなりと踏み入って。
掛かり湯のシャワーですよ、熱くないですか?
背中流しましょうね、腕を上げてくださいな、
俺は介護されてる爺さんかなんていう、軽口を叩き合いつつ、
それは無難に手際もいいまま、問題なく入っていたものの。
「……あ。//////////」
「うん。オレは別にかまわねぇんだけどもよ。」
中也の目の前、しかも明るいところで肌脱ぎになるなんてのは滅多になかったので、
一緒に湯船につかる段になって、
素肌同士がくっついたことで、ようやくハッと我に返った敦だったりし。
あああ、えっとあのそのと、言葉にならぬ声出して、
白虎の少年が真っ赤になったのは湯にあたったせいじゃあなかろう。
「…ききかん無さ過ぎだぞ敦。」
「危機感て何ですよ、危機感て。//////////////////」
「そこまで赤くなってて訊くか?」
カカカと笑い、背中を預けてのことお膝へ座る格好になった相手へとんと凭れる、
その小さな身の柔らかさが、今になってこちらへドキドキを運んでくる。
___あれ?
何でまだドキドキするのかな。
中也さんは向こうを向いてるのに。
あんまり凝視しちゃあますます照れるだろうと気遣ってくれてのことで。
じゃあ、このドキドキは?
明るいところで裸を見られて恥ずかしいとかいうのとは違うのかな?
やっぱり今更何が恥ずかしいものかと、
風呂から上がっても さばさばしたところは変わらぬままに、
そりゃあ手際よくバスタオルで体を拭いて、
パジャマ代わりのロングTシャツを頭からかぶった中也だったのへ、
「それだけじゃあ寒いでしょう?」
ひょいっと小さな身を抱え上げ、ソファーに腰かけると
これは敦が此処での部屋着にしているフリースのカーディガンを肩へと掛けてやり。
まだ少し湿り気のある茜色の髪を指で梳いてやっておれば、
「なあ。敦…。」
ちょっぴり殊勝そうな、静かな声が聞こえて来て。
風呂上がりのおねだりかな?と察して、
「タバコやお酒はダメですよ?
体が受け付けないでしょうからね。」
何度か口にした禁令を繰り返せば、
「じゃあなくて。」
むむうと口許をへの字に曲げて見上げてくる。
ああこの顔はと思い当たったのが、帰ってきた折、エレベータへ乗る直前に見せた顔。
何か言いたそうだったが、何でもないと口を噤んでしまい、
帽子の陰になったので追求し切れなんだ時の表情だ。
「てめえはとてもやさしいから、
子供になったオレへいろいろ気をつかってるんだろうが。」
ああ、長い言い回しだとところどころで抑揚が浮いてしまうところが幼げで愛らしい。
だからと言って、聞き惚れるあまり中身をうっかり聞き流しも出来ぬ。
だってそれほどに真摯な顔で見上げている中也さんなのであり、
こちらの腿へちょこりと余裕でまたがれてしまうほど小さくなっているその上、
お顔の縮尺も、そりゃあ愛らしくまとまっていて。
宝石みたいな玻璃の青が沈む、それは大きな双眸が上目遣いになると、
綺麗だ可憐だと思うと同時、
湯上がり独特の優しい匂いがほわりと香って。
「…っ。」
抱き込めてしまってそのまま離したくなくなるような
目が眩みそうな衝動が 背条を伝いかかってハッとする。
「敦?」
得も言われぬいとけなさが、
無造作に扱えば掴みつぶしてしまうだろう危うさと寄り添うて、
こうまで間近にある恐ろしさ。
“何だか途轍もなくいけないことと向かい合ってないか、ボク。”
難しい言葉で言えば、背徳感。
純白の禁忌を穢す、罪深い破壊行為へ連れ添う、
とっても危険な快楽の匂い。
それでなくとも大好きな人で、
甘えるようにしがみついたら同じくらいのぎゅうで抱きしめ返してくれるのが、
その肌触りや温みや肉づきの触感が、何とも言えずたまらなくって。
先日来からは全身で抱き合って、互いを感じ合ってもいるほどに、
許されるならずっとずっと触れたままでいたい人。
でも今は、そんなことが許されようはずもなく
中也さんが小さくなったのをいいことに、
こちらがから近づかねばいいのだと、
背の高さがぐんと開いたのだからとどこかで油断していたのかも。
いかんいかんと息をつき、姿勢を正しかけたのだが、
「…なあ、」
何か言いかかっていたの、改めて口にしようとする彼だと気がつき、
はいと口許をほころばせかかったところへと、
「きすするくらいはいいだろう?」
「……はい?」
選りにも選って、
保護対象ご本人がそんな爆弾を投下してきたからたまらない。
「…えっとぉ?」
空耳かな、訊き間違いかなと、
恐る恐るに見下ろしたお顔は真剣そのもの。
見下ろされて微妙に くうと息を飲み、眼差しを揺らして含羞んだものの、
「だから、だな。//////////」
敦の態度が子供扱いになるのは仕方がない、だって実際に小さい身だもの。
高いところへは当然のことながら届かないし、
物を取るくらいならともかく、向かい合って目線を合わせたいだけなのに、
いちいち異能を発揮するのは仰々しいし、
ぷかりと浮かんだ存在が相手では、百年の恋だって冷めるだろう。
すっかりと幼子になった中也なのだと気持ちを切り替え、
ちょっとマセた口利きなのへも頑張って耐え、
気持ちに蓋しているらしいのはようよう察した彼だったけれど。
「こんな間近になって半日もすごしてるなんて、
こっちには ジゴクみたいなもんなんだぜ?」
ジゴク? ああ、地獄と、拙い抑揚を頭の中で変換し、
それから “…え"?”と相手を見下ろす。
何にか愚図るように きゅう〜〜んとつぶらな瞳を弱々しくもたわめて
こちらを一途に見上げてくる美美しき幼子へ、
何をどう言ったら引き下がってくれようかと一気に焦るが、
中身は大人で、飴玉やチョコレートなんて効きはしない。
タバコの匂いがお似合いの、
大好きだと甘く囁いて頬へ触れてくれる、頼もしい腕で抱きしめてくれる、
そんなお人が幼くなっただけの存在で。
「なあ敦、大好きな相手の いい匂いとか優しい声とか、
ずっとずっとこんな近くで触れてたら聞いてたら、
どうなると思うよ。」
これまでもいろいろと我慢してくれていた人。
自分だけが満足するのは睦み合いとは言わないからと、
子供のような甘え方がやっと出来るようになった
幼すぎる敦を相手に、少しずつ触れて、少しずつ馴染ませて。
それは大切にしてきてくれた人でもあって。
「えっとぉ…。////////」
「なあ、それ以上は何にもしねぇから。」
いやあの、それはそうでしょうとも、あなたの忍耐強さは重々知ってます。
そうじゃなくってですねと、
それはそれは切なげなお顔で見上げてくる可愛らしい幼子様へ
「ちゅ、中也さん?」
ぎこちない声で呼びかけて、
「???」
何だ?と、
こちらの妙なほど重々しい気配を察したか、
差し迫ってた表情を一旦緩めてキョトンと小首を傾げたところへ、
えいと思い切って応じた答えはといえば、
「こちらからこそ察してください。」
されるキスには何とか慣れたとはいえ、
こんなあのその、ちょんと触っただけで痕が付きそな可愛らしい人へ
どうやって性的に触ればいいのか判りません、と
隠したってしようがないし、嘘だけは付きたくない。
なのでと正直なところを、えいっと訥々と紡いだところ。
じいッと見上げて来ていた可愛らしい坊やの表情が心持ち固まって。
「…………………………………………。」
あああ、もしかして軽蔑されたか呆れたか。
微妙な間が挟まってから、
あらためてじわじわと真っ赤になった愛くるしい中也さんが
やわらかそうな緋色の口許からぽつりと呟いたのが、
「何だよ、ケダモノ飼ってるんじゃねぇかちゃんと。//////////」
「中也さん、詩的な描写であらぬ云いようするの、辞めてほしいです。//////////」
しかもそんなカナリアみたいなお声で、と
一応は年長側なのだと保ってた矜持らしきものもとうとう限界か、
うわぁんという嗚咽が縫いつけられてそうな泣きそうな声で哀訴すれば。
しょうがねぇなぁとの苦衷が混ざったなかなかの表情、
やわやわな片頬だけに滲ませるという離れ業をやってのけてから、
「じゃあ、手前はじっとしてな。」
いつもと一緒だと目許を弧にたわめつつ、
ひょいっと身を伸ばしてきて、温かな存在が首や顔へと押し寄せて。
え?え?と翻弄される中、
こっちの口許へチョンっと柔らかいものが触れたかと思ったら、
そのまま むにりと押し付けられ、うっすら空いた隙間からちろり濡れた感触が躍って…。
「………あ。////////////」
「……………あー。やっぱこんなじゃ足んねぇけどな。」
こちらの胸元へそおと手をつき、
膝立ちになったまま、一丁前な言いようして。
戻るまでのおあずけかぁなんて清々しく笑った、何て男前な幼子様か。
「ちゅ、中也さんっ。」
「んん?」
なんだ?と大きな瞳を瞬かせるお顔はやっぱり、
ともすれば少女のように
水蜜桃を思わす瑞々しいまでの甘くて可憐な造作のそれだが。
小さなお手々で恋人くんの髪を
よしよしと梳いてあげる所作の堂にいったことと言ったら、
手のひらの温みで敦くんが思わず泣いちゃいそうなほどだったらしくって。
「い、いけないことは絶対しませんから、今夜は一緒に寝てくれますか?」
「お、おう。そのつもりだが。」
いけないことって何だろう、この子のレベルだと何をどう知ってるのかなぁと、
本気出してた十代の頃に、すでに千人斬りだって達成済みかもしれぬ大幹部様、
そういう方向でキョトンとしちゃった
どれほど付き合っても退屈しない可愛い小虎ちゃんから、
それはぎこちないキスを贈られ、またぞろ胸を鷲掴まれるまで3分ほど…。
〜 Fine 〜 17.11.21.〜11.22.
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*何かドタバタした展開ですいません。
中也さんは幼児になっても男前だということでvv
ちなみに、ぶきっちょになった姿を残すこととなるので
“動画で撮ってはダメです”と、
師匠からのおねだりを必死で拒絶した小っちゃくなった龍之介くんへ。
それならそれでと、
隠しカメラや隠し撮りという強引な奥の手さえ
あの策士の太宰さんが使えなかったのは、
『じぇったいにダメ、めぇでしゅ。』
舌っ足らずな言いようの甘い響きと共に、
子供服に合わせてか、小さめの縫い包みか
無くさないようにとつながったミトンのようなそれだった
何とも小ぶりな “らしょーもん”で、
見てはダメダメと言わんばかり、
目許へ蓋っと目隠しされた対処があまりに愛らしかったからだそうです。
「あああ、あんな高等技術、どこで覚えて来たんだろうか…。////」
可愛いのは嬉しいけれど、(良いのか?) 笑
こっちの心臓がもたないし、他でも振りまいてたら一大事。
電子書簡や書き置きへの微妙な文言といい、
あの子って一体 何を参考にしてるんだろうね?
まさか敦くん、微妙にマニアックな映画とか観せてないだろうねと、
どこへ飛び火させてますかな、相変わらずの溺愛っぷりらしいです。

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